本日は、薄毛治療の第一線でご活躍されている専門医の先生に、髪育注射のリアルな実情についてお話を伺います。先生、髪育注射はどのような方に特に有効なのでしょうか。「はい、髪育注射は、主に毛根がまだ生きている状態の薄毛に対して高い効果を発揮します。例えば、女性に多いびまん性脱毛症のように、髪全体が細く、ボリュームがなくなってきたケースや、男性型脱毛症(AGA)の比較的初期の段階などが良い適応となります。注入する成長因子などが、弱ったり休止したりしている毛母細胞を刺激し、再活性化させることで、髪を太く、強く育て直すのが主な目的だからです。」なるほど。では、逆に効果が出にくいケースというのはあるのでしょうか。「完全に毛根が消失してしまい、長期間つるつるの状態が続いている部位に、髪育注射だけで新たな毛根を再生させるのは、現在の技術では非常に困難です。あくまで『育てる』治療であり、『無から生やす』魔法ではありません。そのため、薄毛が気になり始めたら、できるだけ早い段階で治療を開始することが、より良い結果を得るための鍵となります。また、治療効果には個人差が大きいのも事実です。生活習慣の乱れや強いストレスがあると、せっかく注入した有効成分がうまく働かないこともあります。」治療を受ける上で、患者さん側が知っておくべきことは何でしょう。「髪育注射は、一度受ければ終わり、というものではないということです。髪の成長サイクルに合わせて、通常は複数回の治療を一定期間継続する必要があります。そして、治療効果を維持するためには、その後のメンテナンスや、ご自身の生活習慣の改善も非常に重要になってきます。内服薬や外用薬と組み合わせることで、相乗効果が期待できるケースも多いですね。大切なのは、過度な期待を抱くのではなく、ご自身の状態を正しく理解し、現実的なゴールを設定した上で、信頼できる医師と二人三脚で治療に取り組むことだと考えています」。
専門医が語る髪育注射の有効性と限界