私の頭皮トラブルとの戦いは、社会人二年目の春に始まりました。新しい部署に配属され、覚えることばかりの毎日。プレッシャーと緊張感からか、ある日、ふと気づくとスーツの肩に白い粉が落ちているのです。最初は気のせいだと思っていましたが、日に日にその量は増え、濃い色の服を着るのが怖くなるほどでした。それに伴い、我慢できないほどの頭皮のかゆみにも襲われるようになりました。仕事中に無意識に頭を掻いてしまい、その度にパラパラとフケが落ちるのがわかり、人の視線が気になって集中できませんでした。当時の私は、このフケとかゆみを「不潔だからだ」と思い込み、洗浄力の強い高級なシャンプーを買い、一日に二回も髪を洗うという過ちを犯していました。しかし、洗えば洗うほど頭皮は乾燥し、かゆみは悪化するばかり。まさに悪循環でした。このままではいけないと、藁にもすがる思いで皮膚科の門を叩いた私に、医師が告げたのは「乾燥と生活習慣の乱れによる、頭皮環境の悪化」という診断でした。そして、薬を処方されると共に、いくつかの生活指導を受けました。それは、私にとって目から鱗が落ちるような内容ばかりでした。まず、シャンプーはアミノ酸系の優しい洗浄成分のものに変え、洗髪は一日一回、夜だけにする。そして、お湯の温度は熱すぎないぬるま湯に設定し、爪を立てずに指の腹で優しく洗うこと。シャンプー後は、必ずドライヤーで頭皮からしっかりと乾かし、保湿効果のある頭皮用ローションでケアすること。さらに、食事についても指導がありました。脂っこいものや甘いものを控え、髪に良いとされるタンパク質やビタミン、ミネラルを意識した和食中心の生活を心がけること。そして、何より質の良い睡眠を確保すること。最初は半信半疑でしたが、私はその日から、医師の指導を忠実に守ることにしました。シャンプー法を変え、食生活を見直し、夜は日付が変わる前にベッドに入る。地味で地道な生活改善でした。しかし、二週間が経った頃、あれほどしつこかったかゆみが少し和らいでいることに気づきました。一ヶ月後には、スーツの肩に落ちるフケの量が明らかに減っていました。そして三ヶ月後、私の頭皮は、かつてのトラブルが嘘のように健やかな状態を取り戻していたのです。